「右肩上がりの人生」は、大いなる勘違い。
「僕にモチベーションなんてあると思う?」糸井重里さんに“走りつづけられる理由”を聞いてみた
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仕事を頑張るって大変なこと。人生100年時代と言うけど、この先の5年ですら、“モチベーション”を保って走りつづけられるのかわからない…というのが、筆者の率直な本音でした。
今回、そんな本音を正直に企画書に綴り取材をお願いしたのが、糸井重里さん。
心に残る数々の広告コピーを生み出し、73歳となる現在も「ほぼ日」の社長として世の中に“面白い”を届けつづける糸井さんが語る、「モチベーション」の正体とは。
〈聞き手=サノトモキ(新R25編集部)〉
糸井さん
まずは、そこからお話ししてもいいですか?
サノ
糸井さん
僕、本当に大したモチベーションなんてありませんから。
サノ
糸井さん
だからこそ、今日いっしょに話してみたいと思ったの。知ってることを話すだけの取材は退屈だけど、自分もわからないことをいっしょに考えられるなら、楽しそうだなと。
なので今日は、インタビューじゃなくてミーティングです(笑)。
みんな何かを目指しすぎている。「こうなりたい」では、続かない。
サノ
50年近くビジネスの最前線に身を置いているお方が「大したモチベーションなんてない」って…どういうことなのでしょうか?
糸井さん
言い換えると、「つねに何かを“目指しすぎている”」。
サノ
糸井さん
それはたぶん、「わかりやすい」からそうするんです。人はわからない状態が怖いから。「自分は今、このために頑張ってるんだ」と思えると、すごく安心するんです。
サノ
糸井さん
だから、やっぱり…“長持ちするモチベーション”ってたぶん、遠い未来の「こうなりたい」じゃなくて、すぐ足元の「うれしい」なんですよ。
「言われた通りの成果を上げる」だけでは仕事の動機は生まれない
糸井さん
「こんなことやってみよう」と思いついて(動機)、実際にやってみて(実行)、世の中なのか友達なのか、何かしら「集合」のなかに放り投げて反応を見て、そこでまた新しい「うれしい(動機)」を見つけると。
サノ
糸井さん
糸井さん
上からはそこを褒められるし、本人のなかでも一定の誇りにはなる。でも、「それが一番うれしいんだっけ?」という話で。
サノ
糸井さん
でも彼らは、「シャリの量が均一だねえ~!」って褒められてもうれしくないわけ(笑)。やっぱり、思わず「…うまい」と唸る姿を見たときに「もっとうまいもんつくりたい」と思うわけじゃない。
サノ
糸井さん
“正しく実行する”というのは、誇りにはなっても「動機」にはならないんですよ。それは、“他人の動機”だけで動きつづけるロボットと同じだから。
お掃除ロボットなら「言われた通り掃除できてえらいな」「いえ、自分の仕事をやったまでです(キラン)」って感じでしょうけど、人間はそれじゃ続けられないんだよね。
糸井さん
結局は、そういうすぐ足元のシンプルな「うれしい」が、一番長持ちする「動機」になっていくんだよね。
人生を、もっと儚め。「右肩上がりの人生」は大いなる勘違い
糸井さん
みんなもっと、「自分の人生を儚んだ」ほうがいいんじゃないかと思うんです。
糸井さん
サノ
糸井さん
物語になったり取材されたりするのはいつだって「右斜上への直線を描く成功ストーリー」ですが、それは“珍しい”からなんですよ。
「人生とは、“右斜上への直線”を描いていくべきものだ」みたいなイメージは、そもそも大いに間違ってるんじゃない?
サノ
たしかに「ずっとモチベーションを維持しなきゃ」というのも、そのプレッシャーに囚われてたのかも。
糸井さん
そこで「うれしい休み方」をクリエイティブすることのほうが、よっぽど大事。
仕事も暮らしも、「自分なんて大したことない」と儚んで等身大の“うれしい”をクリエイティブできる人のほうが、結果的に長く走りつづけられると僕は思いますよ。
サノ
糸井さん
道具のほうに力点を置きすぎないほうがいい。「自分」が見えなくなっちゃうから。
5年後を考えるときも、「仕事」より先に、どういう「自分」でありたいか。…そこからじゃない?
糸井さんはおそらく、言葉や切り口を変えながらずっと、「まあ、落ち着きなさい」と言ってくれていました。仕事は大変だし、しんどいこともあるし、立ち止まっちゃいそうになるときもあるけど…小さな自分を認めたり、小さな「うれしい」を見つけたり。走りつづけるためのヒントは、意外と足元に転がっているのかも。
ここまでの5年を受け止めて、またここから5年、新しく走り出す。等身大のモチベーション、ちょっと見つけられそうな気がしてます。
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糸井重里×近未来
9月1日発売となる"2023年版"のテーマ は 、「生まれる」。「上手に自分を管理するための手帳」ではなく、「何かを生む素(もと)になる手帳」になってほしいという糸井さんの願いが込められています。
2023年度版の特大ニュースのひとつ には、『ONE PIECE magazine』とのコラボレーションも! 手帳本体の内容までコラボを行うのは「ほぼ日手帳」史上初。365日分、さまざまなキャラクターのセリフや誕生日を収録しています。